ヒッチコック「Foreign Correspondent」

ヒッチコック「海外特派員」(1940)を見直す。やっぱり傘のシーンはゾットするようなすばらしさ。そのすぐあと、路面電車の間を逃げ追うアクションもいい。ヒッチコックトリュフォー「映画術」 定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォーによれば、この傘のアイデアと風車のアイデアからはじまったというpp123-124.
 ラスト近くのアメリカ行きの飛行機内でのジョーンズとキャロルとのやりとりのなかに「minority report」という語が出て来ていた。スピルバーグがこの映画を引用していることは、プロットのフレームや、傘で雲隠れするシーンなどでも明らかであるが、しかし原作はディックであった。このヒッチコック「海外特派員」とディックとにおけるひとつの語の反響。それとも、スピルバーグが両者をつないだのか(しかしこの台本はもともとトム・クルーズが持ち込んだという)。なんにしてもminority reportという語は、三つの作品に現れる。というか、ヒッチコックの発した語が、後に増幅されている。
 今回あらためて気付いたことは、「海外特派員」における「文字」。たとえば、HOTEL EUROPEのネオンをジョーンズが逃走中に触れて、ELのネオンが消えてしまい、HOT EUROPEになるというチープトリック。このcheap trickという語も、台詞のなかに出てくる。タイプライター、メモ、J・JからH・Hへ。
「ユーモアなんかこれっぽっちもない」「島国」「階級意識の強い」イギリスからアメリカへ渡ったヒッチコックopcit.,pp111-113.のこの映画を、ナチスゲッペルスは大好きだったとのこと。