ルノワールの「ゲームの規則」

ジャン・ルノワール(1894-1979)の「ゲームの規則」(1939)。安価DVDだったので、画像の質が心配だったが、問題なしでうれしい。8年振りだったから、やはり自分の観点が微妙に変わっている。テンポが早く、ドタバタコメディ調である。スクリューボールコメディとすらいいたいほど。
 以前見たときは、映画史の頂点のひとつを見るという、事前に入っていた情報が邪魔をしたというか、まあそういう情報がなければ、見ることもなかったのだが、なんか勝手にありがたく荘厳な感じで見てしまっていた。でも今回は、この映画にふさわしく、軽快に楽しめた。ガス・ヴァン・サントの「エレファント」もすばらしいが、ルノワールの「ゲームの規則」は同じすばらしさでもやはり王者の風格がある。それはもちろん技術によるのだが、サントの技術=注意が演技行為よりもむしろ空気・大気の描写に注がれているのに対し、ルノワールは映画的というかフランス古典主義以来の伝統に連なる演劇、台詞回し、動線においてドラマを提示している。完璧である。
 狩り場である森のショットの構図も、伝統的な絵画の構図をほのめかすような(あるいはネタとなっている絵画があるのかもしれない)、古典的な均衡を持っている。以前見たときも、狩りのシーンは印象的であったが、やはり秀逸なシーケンスである。
 この映画について書くべきことはまだあるが、中断する。
検索してみると、ルノワールは晩年は不遇であったようだ。というか、フランスでは、商業的成功を収めることができず、二次世界大戦後も、フランスでは映画を撮る機会がなかったという。フランス復帰となった「フレンチカンカン」(1954)は興行的成功となったものの、その後は当たらず、アメリカに移住し失意の晩年を送ったという。信じられない話だが事実のようだ。ハリウッドに関わるにはもう年が過ぎていたか。