農本主義/パゾリニアン


橋川文三、すごくいい。とりわけ、農本主義と日本浪漫派との関連についての章には相当興奮させられた。また、保田は、戦後、憲法パトリオティズム的な発言をしている。ここは一見、奇異にも感じられるが、どうやら保田には「絶対平和主義」のような思考形式が強くあるようだ。
 大川周明もそのようであるが、両者ともに、ガンディーに影響を受けているという。重要な点である。

権藤成卿(1)や橘孝三郎らの農本主義に関する記述を見ていると、どうにもパゾリーニにおける「農村」主義とオーヴァーラップする。そもそも、「農本主義」が、日本固有のイデオロギー形式なのかどうかが分からない(2)。
 ミシュレらの「民衆」概念が反響しているのはたしかだろう。なぜならフランス革命は、兆民らを通じて、すでに近代日本にとって前提的な知識であったのはたしかだろうから。あるいは、変奏されたルソー主義なのか?
 たとえばフランスもまた農村社会である。日本でいう「自然村」とは、テンニースのゲマインシャフトとも類縁するという。
 フランスでいえば、バルザックが農民について記述している。ミレーやゴッホもそうだ。ル・ロワ・ラデュリも、なんども開いてはいるが、いまだしっかりと通読していない。
 
 しかし、まあやはり強く見つめたいのが、パゾリーニである。パゾリーニ農本主義。あるいは、パゾリーニにとってのアフリカニズムと、アジアニズムとの類縁関係性とか。




(1)http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0093.html
権藤は、大杉栄にシンパシーを感じていたという。黒龍会内田良平と袂を分かった原因ともなったようだ。
内田良平については、http://www002.upp.so-net.ne.jp/kenha/uchida.html
李容九と韓国併合の悲劇については、いままさにアクチュアルである。それにしても、内田や杉山茂丸らの謝罪を見ると、それとくらべて今日のプチナショナリスト、プチ右翼がいかにチンケな存在かが分かる。「マンガ嫌韓流」などというキショイマンガ(ちゃんと買って読んだが)の主旨は、日本の民族主義となんの関係もない、桂太郎主義。つまり利権主義だ。このマンガおよびそれに賛同する嫌韓流派は、マスメディア批判を除いて、実に、ゴミである。


(2)ネット検索したら、Japanese Agricultural Fundamentalismとあった。日本農本主義については、さすがに資料が多い。
 あとは、フランスのケネーらの重農主義
http://cruel.org/econthought/schools/physioc.html
 農業原理主義…農民原理主義…まあでもたしかに、日本の農本主義は、独自の原理主義ではある。そうして、昭和維新なり大東亜戦争なりを導いた重要な思考形式である。なんにしても、vox populiー「民衆」の声という契機ははずせない。あらためて明治維新より大東亜戦争までの社会運動史をざっと振り返ると、じつに、すさまじい。