ジョン・ランディス狼男アメリカン」。これまた小学生以来。当時、佐世保にはサン書店というのがあって、レンタルヴィデオなるものを導入した走りだった。海賊版ヴィデオとかあった。この店で借りたのだが、親父が借りたのか、自分が見たいと思って借りたのか、思い出せない。また、字幕ありだったのか、英語だけだったのか、たしか字幕なしだったかと思う。ということは、今回見直して、かなりコメディ映画の文法を取り入れていると分かったのだが、当時は分からないまま、ホラー映画として見ていたのだろう。死者となったジャックのSFXが当時すごく気持ち悪かったのを覚えている。
 それで、ジョン・ランディスフィルモグラフィーを見ると、なんと「アニマルハウス」「ブルースブラザーズ」の監督だった。だからか。ホラー映画の文法とどこなく違うし、また細部でくすぐるようなギャグ(たとえば医者の机のうえになる筆立てが、髑髏、とか。看護婦の台詞とか。)見て、なんじゃこりゃという感じ。また主演のデヴィッド・ノートン、顔が面白い。だから、有名な変身シーンも、もはやいまとなってはギャグに見える。
 冒頭、ウェールズの風景が美しい。名曲「ブルームーン」の3ヴァージョンを使ったりするあたり、センスがいい。変身シーンに使用される「ブルームーン」は、われらがサム・クックのヴァージョンだった。ちなみにマルグリット・デュラスもお気に入りの曲でもある。
 時代もあるのだろうが、衣服がいい。
「ブルースブラザーズ」の監督らしく、カーアクションもちょろっと見せたり、地下鉄のシーンや、映画館のシーンもいい。映画館で、ポルノ映画のあえぎ声を合わせて、みもだえしながら変身するシーンも笑える。
この映画は、「ブルースブラザーズ」の翌年に作られた。
 それにしても、台詞回しが、妙にコミック/漫画的に見える。人物が実写なのに、漫画の線が見えてきそうな勢いがある。絵コンテが、いかにものアメコミなんだろうなと想像させる。「アニマルハウス」も随分見ていないが、なんとなく残っているイメージは、ロバート・クラム的なものだ。クラムの線描は陰影と太さと曲線…いや曲線というより、グニャグニャ線とでもいうべき独特の丸みが印象的であるが、それほどではないにしても、おそらくはジョン・ランディスも相当影響を受けているのではないだろうか。あるいは、ジョン・ベルーシの体の輪郭がクラム的なのだ。つまりベルーシの体はすでにして、誇張されている。ベルーシほどではないが、ノートンもすでにして誇張されている。
 こうして考えてくると、この映画でのノートンの演技は、喜劇演技として相当高度なものだと思われてくる。プロット自体は、伝来の狼男伝説と同じく、悲劇的なものである。