世界面

タイモン・スクリーチの本のなかにこうあった。(「序」より)

 司馬江漢が御婦人に
「これが世界の図じゃ」
と見せていると、インドあたりを見ていた婦人、

「極楽というところはいずくにござります?私はどふぞ活きて極楽へ参りとうございます」と聞く。

 江漢、「この世界の図は丸いものじゃ。その外は天でござる。この様なる世界が天のなかにはいくつもござります。其うちに極楽世界がありて、この丸いと丸とのあいだがはなれてあるところは、みな天でござる。爰で活きて歩ていかれぬ」と答える。

 この場面をスクリーチは江戸の「面的な世界像」と西欧の「ユニタリーな世界像」とがぶつかりあおうとしていると見る。
  「面的」とは「プレイナー」と表記されているので、plainerか。
「ユニタリー」とはunitaryで、「単一面」ともいわれる(p.11)。
 一元論・一神教的な世界像と、絵巻物的・襞的な世界像ともいえるだろうか。
 とにかく、婦人が極楽の場所をきいたのには、江漢が世界の全てがここにあると豪語したせいもあったろうが、それにしても面白し。