4.年表3月26日版(ニ）

続き。

1872（明治５）9月、東京府、劇場に課税開始。また、歌舞伎関係者に、貴人・外国人の鑑賞にふさわしい道徳的筋書きにすること、狂言綺語をやめるよう通達。三座制も解消。
・ディズレーリ演説：帝国連合のヴィジョン：拡張より既得植民地の維持：グラッドストンの平和主義に飽きていた国民に支持される。
1873　征韓論。板垣下野。第二次仏安戦争
1874　板垣江藤ら民選議院設立建白書（翌年愛国社結成）。江藤新平佐賀の乱。台湾出兵。
1875　江華島事件（翌年　日朝修好条規、ペリー来航の再生産／反復）。新聞紙条例、讒謗律。歌舞伎『吉備大臣支那譚』：邪馬台詩解読の場面。
1876 メルヴィル『クラレル』：トルコ人のように残酷なアングロサクソン／他のいかなる人種からも愛されない／拝金主義の海賊ども／地獄の太鼓が聞こえてくる／民主主義の暗黒時代。
1877　西南戦争。戦後、インフレーションと内国制度整備。
1878大久保利通暗殺／スコットランド人マクレオット日本ユダヤ民族説／6月「千代田神徳」で有職故実を再現開始（歴史の再現）10月団十郎「斉藤実盛」で源平時代の服装→仮名書垣魯文、「活歴」（活動する歴史）批判
1879 　田口卯吉「日本開化小史」「内地雑居論」。末松謙澄「成吉斯汗」をロンドンで出版（義経説。欧州で日本認知させるため）
1880集会条例。12月第一次ボーア戦争（〜翌3/23):金・ダイヤモンド鉱山利権を巡り蘭系ボーア人と英国：英敗北。
1881明治14年の政変（ドイツ君主制派＝伊藤と英議院内閣制派＝大隈との対立）。松方デフレ（西南戦争後インフレ対策）と日本銀行設立。秋田事件（挙兵計画発覚）
1882福島事件、7月壬午事変（守旧派＝大院君派による開花派＝閔妃派と日本公使館員殺害→日清両軍漢城駐留）。仏、ハノイ制圧。兆民「民約約解釈」（ルソー）／団十郎の「活歴癖」が悪評。
1883　高田事件。清仏戦争（〜85仏、越南とカンボジア併合、仏領インドシナ連邦建設)。
・団十郎、求古会発足（有職故実の研究、綺堂の父も参加）
1884　群馬事件、加波山事件、秩父事件。12月甲申事変（朝鮮開化派と日本軍のクーデタ）→諭吉、失望。大阪事件
1885,10月警視庁令で、劇場の興行時間を８時間以内に。11月大阪事件。旧自由党左派・大井憲太郎らが、朝鮮に渡って閔妃ら保守派を一掃しようとクーデタ画策、事前に検挙。「帝国日本」はこの後、朝鮮政策を本格化、日清戦争の翌年には実際に王妃閔氏を暗殺。北村透谷はこの謀議から離脱、文学に転じて「内観的夢想」を言語化[1880 年代の政治小説(『経国美談』『雪中梅』)→近代作家たちの「内観的夢想」（『浮雲』〜透谷『蓬莱曲』『内部生命論』]。朝鮮独立派壊滅と同年3月福澤諭吉「脱亜論」<ドイツ帝国(1871-1918)の植民地獲得開始：南洋諸島、ナミビア、ルワンダ、タンザニア、トーゴなど>
・米ジョザイア・ストロング『我が国』：世界の耕作可能な土地はまもなくなくなる。世界は新たな歴史的段階、諸民族の最終的な競争の段階に入る。世界で最大の自由と最も純粋なキリスト教と無類の力を持つアングロサクソン民族はいまそれに備えて鍛錬しているところである：人類アングロサクソン化のビジョン。
1886長崎事件:清水兵暴動。玄洋社民権論から国権論へ。9月演劇改良会発足（末松謙澄、渋沢栄一、外山正一ら）：上流階級の鑑賞のために女形（および女優の出演）の廃止、花道の廃止、劇場改良を提言。厳本善治「演劇の改良」外山「演劇改良論私考」逍遥「美とは何ぞや」10月末松（博文の娘婿、内務省参事官）「演劇改良演説」逍遥「末松君の演劇改良論を読む」／10/24紀州沖でノルマントン号事件（英国船のアジア人種差別→領事裁判権をめぐり不平等条約撤廃運動）11月外山「社会改良と耶蘇教の関係」末松「演劇改良意見」高田早苗「演劇改良会の解散を望む」／依田学海と団十郎、協力して活歴劇（歴史の再現）
1887 , 4/26外務大臣井上馨邸(現国際文化会館)の仮設舞台で明治天皇、各国公使らのために天覧歌舞伎上演（団十郎感泣）。5月川上音二郎、神戸楠公社で「改良演劇西洋美談、斎武義士自由の旗揚」6月四迷「浮雲第一編」（〜89）7月小中村義象「国学和歌改良論」8月兆民「平民のめさまし」９月逍遥「批評の標準」12/26保安条例（1898，6/25廃止）、民権派壮士570名東京追放。
1888,2月武津八千穂「国学和歌改良不可能論」、3月四迷「学術と美術との差別」10月依田学海「政党美談淑女の操」／演劇矯風会（演劇改良会の後身。のち演劇協会）12/3角藤定憲、大阪新町座で大日本壮士改良演劇会（大日本芸劇矯風会）旗揚げ：「耐忍之書生貞操佳人」（角藤の小説「剛胆之書生」芝居化）「勤王美談上野曙」（勤王義談−とも。秋水）
1889 2月大日本帝国憲法。正式の国号を大日本帝国とする。独帝国(1871-1918)に倣う。山県有朋総理就任：超然主義（政党政治を嫌い、議会と敵対）で軍備拡張。4月蘇峰「言論の不自由と文学の発達」、第二インターナショナル(-1914)。福地桜痴ら歌舞伎座創設（洋風木造、内部は和風）。10月鴎外「演劇改良論者の偏見に驚く」
1890 11月第一回帝国議会。教育勅語。
1891 井上哲次郎「勅語衍義」；東洋諸国は微弱、日中のみ。然し中国は古典に拘泥、独り日本は進歩の念、日月に興り「四方皆敵」頼むべきもの…四千万の同胞。然れば我が邦人たるもの、国家の為には一命を塵芥の如く軽んじ、奮進勇往、以て之を棄つるの公義心なかるべからず。／穂積八束、民法典論争。「民法出て、忠孝滅ぶ」：仏式の平等博愛主義を批判。
1893　仏、ラオス保護国化（インドシナ植民地完成）。５月透谷『内部生命論』翌年自殺。卯吉「居留地制度ト内地雑居」で同胞を世界に散布せよと説く。
1894 ２月、朝鮮・甲午農民戦争（農民＋東学党）。 ６月、清、日本ともに朝鮮出兵。 ８月、日清戦争。〜95,3（背後に英国） 。１２月蘇峰「大日本膨張論」
1895 1月「太陽」「帝国文学」「文芸倶楽部」創刊／日本、台湾・遼東半島獲得。朝鮮、清より独立／諭吉、台湾の抵抗運動に際し「土人は眼中に認めず」「兵力を以て容赦なく掃蕩を行い…一切の醜類を殲滅」（小熊55）。田口卯吉「日本人種論」フン族（小熊p174）
1896 竹越与三郎「二千五百年史」。第二インター、アナキストを排除。11月大西祝「社会主義の必要」
1897　１月柳浪「非国民」4月団十郎の活歴と桜痴の歴史劇体制（其水ら河竹派を排斥）・抱月「社会小説論」→社会小説論争6月潜「演劇論」／哲次郎と木村鷹太郎雑誌「日本主義」創刊。キリスト教系「六合雑誌」／穂積八束「国民教育　愛国心」：祖先教による服従とは敬愛。「約束に由る権力団結においては服従あれとも敬愛なし。人類平等の関係においては博愛あれども服従なし」。家族国家論。／高山樗牛「我が国体と新版図」異民族統治のためには権力関係をもって臨め／10月朝鮮、清の服属国でなくなった以上、王号使用は不適切とし、国号を大韓帝国とし、高宗、皇帝に即位／中村太八郎、片山潜、社会問題研究会。秋水も入会。翌年、社会主義研究会へ。
1898 独、露、仏、英ら租借。 米西戦争（米、フィリピン併合）。12月大韓帝国、独立派の李承晩を逮捕。
1899内地雑居開始。井上哲次郎「内地雑居論」、横山源之助「内地雑居後之日本」／北海道旧土人保護法／高山樗牛「帝国主義と植民」：混血を避けた英国に学べ。／6月大韓国国制　10月第二次ボーア戦争（〜1902):強制収容所戦略と焦土作戦。英、勝利／11月韓清通商条約／米D・ジョーダン：弱小民族の権利や意思を踏みにじるようなら、まもなくアングロサクソンは世界の善のために滅ぼされるだろう」
1900年1月上田敏「芸術の趣味」／3月治安警察法制定。社研、社会主義協会へ／6月義和団の乱：扶清滅洋を標語とする：日露英仏米独伊オーストリアハンガリー帝国連合軍、制圧。馬蹄銀事件（日本軍の銀横領）を秋水『万朝報』で追求、山県有朋の恨みを買う／米アルバート・ベヴァリッジ「神は全人類のうちアメリカ人こそが世界を救済する選民とされた」としフィリピン併合を正当化
1901、4月秋水「帝国主義」、5月安倍磯雄、片山潜、幸徳秋水、西川光二郎、社会民主党結成、伊藤内閣は翌日に禁止。8月樗牛「美的生活を論ず」9月登張「美的生活とニーチェ」／田口卯吉「国語上より観察したる人種の初代」日本アリヤン人種。新村出反論。
1902、1月日英同盟(対露）。 2月鴎外「審美極致論」
1903　露、南下。 英、ラサ占領。5月秋水非戦論。11月幸徳堺、平民社を設立
1904年　2月日露戦争(〜05)。欧米で黄禍論。社会主義協会の結社禁止。8月薫「非戦闘員」／第一次日韓協約：高宗のロシア宛密書発覚し、日本政府の推薦者を韓国政府の財務外交顧問に任命すべしとなった／11月幸徳堺「共産党宣言」翻訳、発禁／天心「日本の覚醒」／潜、アムスでプレハーノフと結束／卯吉「破黄禍論」天孫人種（日本人）は白色。
1905,1月ロシア血の日曜日（第一革命の原因）。9月日露戦争終結。日本、南樺太、関東州租借。日比谷焼討事件。10月長谷川天渓「表象主義の文学」／11月第二次日韓協約で日本、韓国の外交権を接収。12/21韓国統監府設置／孫文・中国革命同盟会結成（東京）、科挙制度廃止
1906 西園寺公望首相就任。弾圧緩和。堺利彦日本社会党結成。党内では幸徳ら直接行動派（硬派）と田添鉄二ら議会政策派（軟派）に分裂。翌年、結社禁止命令／大隈重信、日鮮同祖論：日本人が資本家。朝鮮人は労働者
／総督府嘱託に内田良平と矢上錦山：日韓合邦の後、一進会を率い、シナ革命に乗じて満州独立を。「鳳の国」構想：大高麗国、扶余族の復興→対ロシア／インド対英反抗運動：スワラジ（自治）スワデシ（国産品愛用）／3月藤村「破壊」5月秋水堺平民社に関心を持っていた北一輝「国体論及び純正社会主義」：国体論批判、発禁。河上肇、福田徳三賞賛。以後、北は宮崎滔天らと中国革命同盟会に入党。11月南満州鉄道株式会社設立（金融資本の大陸進出）
1907　6月高宗、ハーグの万国平和会議に密使を派遣。背後に英ベッセル・米ホーマー・ハルバート。会議は密使の出席を拒絶。翌月第三次日韓協約：官吏任命権を統監が掌握／足尾銅山、暴動罷業／加藤弘之「吾国体と基督教」：立憲的族父統治。世界教は民族教を滅ぼすとして基督教批判／9月花袋『蒲団』→自然主義論争（〜1910）。
1908,1‐4月漱石「坑夫」6/22赤旗事件：神田の映画館「錦輝館」で山口孤剣出獄歓迎会、石川三四郎により硬軟両派合同。旗を振り革命歌を歌いながら街頭へ出た寒村、大杉栄ら検挙→山県有朋、西園寺の融和策を批判→7月西園寺内閣総辞職／青年トルコ党革命
1909,1月「麺麭の略取」秋水訳。2月金子筑水「実生活と文芸」、柳田「後狩詞記」（農政学→民俗学）イラン国民軍蜂起テヘラン占領。６月花袋「芸術家と実作者との差」→「実行と芸術」論争 7月秋声ら「実行と芸術」御風「自然主義論最後の試練」／10月博文ハルビン駅で安重根により暗殺。11月自由劇場起こる（新劇）。
1910（〃43）4月「白樺」創刊／5月大逆事件（就縛開始）検事平沼騏一郎、松室致らによるフレームアップ／6月柳田「遠野物語」長塚節「土」（〜11月）／７月秋声「足跡」（〜11月）漱石「文芸とヒロイック」。統監寺内正毅、憲兵と警察を一体化／8月韓国併合、関税自主権の確立。啄木「性急な思想」「時代閉塞の現状」／9月堺利彦売文社設立／10月韓国統監府,朝鮮総督府に改組。漱石「思い出す事など」11月鴎外「沈黙の塔」
1911（〃44）1月24日幸徳ら処刑。西田幾太郎『善の研究』泡鳴「断橋」武郎「或る女のグリンプス」藤村「犠牲（「家」後編）」。田村俊子「あきらめ」／２月徳富蘆花『謀反論』。実篤「お目出たき人」。国定教科書の南北朝併立説を非難する質問書が衆議院に出され、南北朝正閏論争起こる。2/4帝国議会、南朝を正統とする決議。教科書執筆責任者喜田貞吉休職処分。「大日本史」を根拠に、明治天皇は南北朝時代に限って三種の神器を所有していた南朝を正統とする。維新資料編纂局設置／3月杢太郎「和泉屋染物店」。帝国劇場、丸の内に開場。歌舞伎座も和式宮殿に改築。4月直哉「濁った頭」5月文部省に文芸委員会設置。啄木「A LETTER FROM PRISON」田中王堂（シカゴ大でデューイに学ぶ）「書斎より街頭に」　6月雨雀「幻影と夜曲」花袋「死の方へ」 8月秋声「黴」9月未明「物言わぬ顔」鴎外「雁」「百物語」「灰燼」らいてう「元始女性は太陽だった」青鞜社結成、抱月「現実主義の分化と新及深」10月　辛亥革命:満族駆逐から五族共和へ標語転換、翌年中華民国成立。清朝滅亡。12月鴎外イプセン「幽霊」訳。■広告の急速な普及
1912（明治45）4月啄木死。6月上杉慎吉「国体に関する異説」（天皇主権説）→7月美濃部達吉批判（天皇機関説＝立憲議会制）7月明治天皇逝去。乃木希典夫妻殉死。10月大杉ら「近代思想」創刊。
1913（大正2）桂太郎内閣に反対する憲政擁護運動激化。平沼・松室、「裁判所廃止及名称変更に関する法律」「判事及検事の休職並判事の転所に関する法律」成立させ、229人の判事検事を一挙に休退職とし443人にのぼる異動命令を発令。司法界粛清といわれる。４月雨雀「埋もれた春」６月大杉「征服の事実」
1914 6月第一次世界大戦８月日本、日英同盟により独へ宣戦／権藤成卿サークル（仏でマルクスと会った飯塚西湖、内田良平ら）麻布飯倉片町の南葵文庫。
1915,１月鴎外「歴史其儘と歴史離れ」「山椒大夫」、中国に21 カ条要求（帝政反対の第三革命、胡適らの文学革命起こる）　9月堺利彦『へちまの花』を『新社会』に改題。河上肇「日本民族の血と手」チェンバレンを下敷きに、日本人優等論、朝鮮人との混血は避けるべき。11月龍之介「羅生門」
1916吉野作造デモクラシーを唱導。普通選挙運動。３月潤一郎「恐怖時代」◇白樺全盛、遊蕩文学撲滅論興る。
1917,２月革命。朔太郎「月に吠える」、石井・ランシング協定（中国の領土保全・門戸開放）。中国、独、墺へ宣戦。６月ロラン「民衆芸術」栄訳、翌年民衆芸術論争。１０月革命＝ロシア革命、直哉「和解」、12月ロンドン「野生の呼び声」寒村訳。 英国、シオニズム支持、オスマンを破りエルサレム入城。
1918,1-5月民衆芸術論争／6月実篤「新しき村に就きて」-利彦批評／中国南北戦争〜２８／７月連合国シベリア出兵。米騒動／高畠素之「政治運動と経済運動」（議会進出論）、山川荒畑と論争。山川荒畑禁固により高畠、社内で優位に。翌4月『国家社会主義』創刊：アナキズムは堺派と高畠派に分裂。高畠弟子に尾崎士郎：大逆事件解明の目的で売文社に。後、国家社会主義運動に関与、戦後公職追放されるが政治小説「大逆事件」「天皇機関説」執筆（全集7・杉中）9月ドイツ革命-11月ドイツ休戦（一次大戦終了）／ネストル・マフノのウクライナ農民運動／佐藤鉄太郎「国体之研究」（小熊144）
1919（〃8）１月パリ講和会議。ウィルソン１４カ条の平和原則（民族自決、海洋の自由ほか）、英仏無視。
日本、山東半島権益獲得、中国で五・四運動、米国でも排日運動、後24年、排日移民法へ。日本は人種差別撤廃を主張するが、米英豪反対。日本で反米感情。ヴェルサイユ体制は日米対立、ドイツの貧困をもたらす。ドイツ帝国、オーストリア＝ハンガリー帝国、オスマン帝国、ロシア帝国、分解。
３月朝鮮三・一独立運動:大正デモクラシーの影響もあり武断政治より文化政治に統治方針を転換／第3インターナショナル（コミンテルン）結成／５月ガンディーによる反英不服従運動。8月満川亀太郎・北一輝・大川周明「猶存会」結成。12月荷風「花火」
1920,２月長江「階級闘争の倫理的批判」→階級芸術論争／３月ニコライエフスク港事件。日本、国際連盟に正式加入（常任理事国）、経済恐慌／６月高畠素之『資本論』翻訳、９月中野秀人「第四階級の文学」10月雨雀「国境の夜」11月和辻「日本古代文化」で「自然人の偉大な子供らしさ」を謳う（小熊305-7）／権藤成卿、自治学会：社稷国家の自立、明治絶対国家主義を批判。社（土の神）と稷（五穀の神）：儒学孟子的日本主義。南淵請安（大化改新の思想家）を参照：『南淵書』。康有為や大杉栄の影響：権藤成卿・橘孝三郎らの超国家主義（共同体回帰、農本主義）は、アナキズムの系譜に属する一君万民思想──氏族共同体の祭祀としての天皇。橘はカーペンター、オーウェン、クロポトキン、トルストイ、白樺派に影響を受けた。武者小路実篤と西村伊作との接点
1921,3月クロンシュタットの反乱、5月「国境の夜」上演（演出土方与志、明治座）、10月「種蒔く人」創刊、即発禁／11月原敬首相暗殺（東京駅）。12月日米英仏四カ国条約、日英同盟廃棄。尾崎士郎『獄中にて』、アナボル共同「労働運動」刊行。柳田國男、国際連盟委任統治委員としてジュネーヴで南洋諸島統治形態決定に参加、欧米の人種差別に衝撃。以後、山人論から「島」―南島論へ。また柳田は朝日新聞で日系移民問題を繰り返し論ず。
1922（〃11）ワシントン軍縮条約・海軍主力艦制限・九カ国極東条約。１月平林初之輔「「第四階級の文学」、広津和郎「ブルジョア文学論」、3月全国水平社結成。実篤「文芸と階級意識」、尾崎士郎処女作「獄室の暗影」（初稿三分の一がされた抹消。ほか九編の「大逆事件もの」あり、講談社版全集七巻には内務省検閲痕）５月菊池寛「芸術本態に階級なし」、雨雀ら「先駆座」を結成し麹町平河の中村屋土蔵（土蔵劇場）で、研究的な小公演が会員内で行われる（震災まで）。７月日本共産党結成（非合法）９月アナ・ボル論争。アイルランド独立。
1923,１月青野季吉「階級闘争と芸術運動」４月長江「資本主義社会に芸術ありや」。赤旗創刊（８月終刊）５月北「日本改造法案大綱」、利一「日輪」、7月マヴォ。８月鱒二「幽閉（山椒魚）」／９月関東大震災、大杉、平沢計七殺害、堺利彦ら逮捕（第一次共産党事件）／11月村山「現在の芸術と未来の芸術」、12月「朝から夜中まで」上演（カイザー作、土方演出、村山美術）12／27虎ノ門事件（難波大助ステッキ銃で狙撃、翌年死刑）
1924年　2月朴烈事件。3月國士「古い玩具」。4月雨雀「骸骨の舞跳」で朝鮮人虐殺を扱い、雑誌「演劇新潮」は発禁。6月土方与志小山内薫、築地小劇場開設／高橋貞樹「特殊部落一千年史」：米移民法改正で日系移民締め出し。人種差別の国アメリカに対して、差別なく異民族を同化してきた日本の優位。中山哲「朝鮮人の名を全部日本名に変ずべし」『日本及日本人』
1925（〃14）普通選挙法公布・治安維持法公布　朴烈事件。元台湾総督府官僚東郷実、同化政策を批判し、分化政策（隔離政策）提唱。11月蓑田胸喜、三井甲之ら「原理日本」。12月日本プロレタリア文芸連盟演劇部（先駆座の承継。後プロ芸）
1926（〃15）1月共同印刷争議応援で、小道具をトランクに詰め出張公演「トランク劇場」→前衛座／3月映画「日輪」（利一作、村田実監督、村山美術）／蒋介石、北伐開始。９月季吉「自然生長と目的意識」、11月前衛座（青野季吉、林房雄、村山ら）
1927（昭和2）4月「彼女」上演（築地小劇場、土方演出「なにが彼女をさうさせたか」）／蒋介石クーデター、国共分離。毛沢東江西省井岡山に革命根拠地樹立。日本金融恐慌　山東出兵。ソ連、スターリンの一国社会主義理論採択（トロツキー失脚）／6月プロ芸、労農芸術連盟（労芸。村山ら）と分裂。前衛座もプロレタリア劇場と分裂。芸術運動の特殊性を巡る急進派（否定論＝プロ劇）と漸進派（特殊論＝労芸）の分裂。福本イズムの分離結合理論にも関する。/山川堺荒畑「労農」創刊
1928,１月利一「新感覚派とコムミュニズム」2月、第1回普通選挙で左翼系49万票（最左翼の労働農民党20万）→三・一五事件(1600人検挙）3月村山知義ら左翼劇場、４月土方与志、新築地劇団。 6月張作霖爆殺事件→国際的非難。「暗夜行路」後編。12月日本プロレタリア劇場同盟（プロット）
1929（〃4）４月四・一六事件(4942人検挙）５月多喜二「蟹工船」」7月土方「北緯五十度以北（蟹工船）」帝国劇場。７月村山知義「全線（暴力団記）」上演８月宮本顕治「敗北の文学」９月　秀雄「様々なる意匠」重治「芸術に関する走り書き的覚え書」岩藤雪夫「賃金奴隷宣言」10月重治「芸術に政治的価値なんてものはない」/ウォール街暴落=世界恐慌。11月失業者30万:不況以前、大正デモクラシーの隆盛、革新派はあからさまに軍批判、一般にも波及。軍服姿で電車に乗ると罵声を浴びせるなどしていた。／里見岸雄「天皇とプロレタリア」。橘孝三郎愛郷会。
1930日本民族衛生学会、ナチス断種法の影響。５月「プロレタリア文学」創刊、村山検挙。９月利一「機械」
1931,1月谷崎、高野山で「吉野葛」４月秋声ら「ファッショとファシズム文芸について」／9月柳条湖事件（関東軍自作自演。満州事変〜1933）／真田鶴松『野馬台詩解説』
1932、1/8桜田門事件（李奉昌、手榴弾）→1/9国民党好意的報道→1/18上海日本人僧侶襲撃事件（関東軍策謀）→1/28上海事変(〜3/3)3/1満州国建国（上海事変は満州事変から目をそらすためだった。2月ハルピン制圧）3月末から、コップ弾圧。4月村山、検挙。5月五・一五事件（海軍青年による犬養毅殺害）　6月堺利彦発狂
1933年 2月多喜二、特高警察により殺害。3月滝川事件、日本、国際連盟脱退／５月秀雄「故郷を失った文学」６月月鍋山貞親・佐野学転向声明。「春琴抄」　７月康成「禽獣」
1934年５月村山「白夜」（転向文学）、本庄陸男「白い壁」、７月健作「盲目」、9月新協劇団結成。「夜明け前」上演。
1935年　相沢事件（皇道派相沢三郎が統制派永田鉄山を斬殺）。政府、国体明徴声明。天皇機関説を禁止（なお昭和天皇自身は機関説に賛成）
1936年　二・ニ六事件、以後皇道派壊滅。翌年、北一輝死刑。
1937年　盧溝橋事件・日中戦争 １１月南京陥落／島木健作「生活の探求」転向文学／文部省「国体の本義」配布／高群逸枝「大日本女性史」
1938 ５月国家総動員法。ソ連がモデル。関係「革新官僚」は、のち企画院事件（〜41）で検挙。
1939　平沼騏一郎、内閣総理大臣。8/20ノモンハン事件。ナチスに傾倒していた平沼にとって、8/23の独ソ不可侵条約締結は衝撃。8/25、「欧州の天地は複雑怪奇」として総辞職。企画院事件を指導。
1940　３月清輝「錯乱の論理」8月村山逮捕、新協解体。10月大政翼賛会
1941 皇民化を進める朝鮮総督府、ナチス的純血主義を批判。古屋芳雄「国土・人口・血液」/７月米英、日本資産を凍結。 12月真珠湾攻撃。
1942　横浜事件　　５月　日本文学報国会　９月「近代の超克」
1943 高群逸枝、神道は人類救済の理想、神武天皇「八紘為宇」＝「世界の家族化」。
1944高群：わがたをやめは家族心を生命としてをり、世界の家族化を願望してやまない。しかるにそれを阻害するものに対してわが聖戦はおこされるのであるから、戦争は積極的に女性のもの／7月ブレトンウッズ協定でIMF創設、金ドル本位制。金１オンス＝$35の固定相場制。
1945　ポツダム宣言（米英支ソ四国共同宣言）。朝鮮分断。インドネシア独立戦争（〜49）
1946 ホー・チミン独立宣言、第一次インドシナ戦争（〜54)
1948 済州島四・三事件（この頃28万いた島民は57年まで3万にまで減少）
1949　中華人民共和国成立。ソ連核実験成功。中ソ、ベトナム承認。
1950 2月　米国でジョセフ・マッカーシーによる赤狩り開始。5月　マッカーサー共産党非合法化示唆。人民広場事件。スターリンと毛沢東、日本共産党の平和革命論を批判、所感派（徳田ら）と国際派（宮本顕治ら）に分裂。徳田、中国へ亡命。6月朝鮮戦争。
1951　サンフランシスコ講和条約。日米安保条約。2/23所感派、反米武装闘争方針、10/16農村ゲリラ戦／山村工作隊.各地でテロ。
1952　破壊活動防止法。
1954　仏、敗北。ジュネーブ協定→米、仏に代わりベトナム南北分割。仏、アルジェリア戦争（〜62)。
1955　日本共産党、武装闘争を自己批判・否定。
1956　スエズ戦争：英仏イスラエル、エジプト侵攻。米ソ介入で英仏、運河利権喪失。英帝国の終焉とも。
1960　第二次インドシナ戦争=ベトナム戦争（〜75)。安保闘争。
1961　大逆事件の唯一の生き残り坂本清馬らが再審請求（事件後50 年）、サド裁判（翌年無罪判決）
1962　花田清輝戯曲『爆裂弾記』　1964　中ソ対立。 武智鉄二「黒い雪」
1965 2月米軍、北ベト爆撃／ 6月日韓基本条約：韓国の軍事提供を日本が経済的に支援する後方支援体制／9/30 事件:スハルトによって共産党関係者虐殺：〜66年３月、数十万〜二百万が犠牲。米、関与。
1966　文化大革命（以後十年続く）　　1967 最高裁、大逆事件再審請求を却下
1968 全共闘（〜69)　２月金嬉老事件、10/9-10.『土方巽と日本人-肉体の叛乱』,10/29吉本隆明「思想としての身体」講演。12/13-23福田善之「魔女伝説」◆高度成長下のアナキズムと反近代主義。また米では反文明／自然回帰／Body Awareness／第四次大覚醒運動。
1969　1/3状況劇場、新宿でゲリラ公演／1/15-31,3/7-13,8/1-6福田善之「魔女伝説」／サド裁判被告敗訴／吉田喜重「エロス＋虐殺」／柄谷「意識と自然」。米、カンボジア介入：ロン・ノル将軍クーデタでシアヌーク追放、農村部空爆。
1970　1月　花田清輝『「吉野葛」注』／11月 三島事件──天皇問題の反復強迫
1971　8月ニクソンショック：ドルと金の交換停止。12月スミソニアン合意まで変動相場制。
1972　2月ニクソン訪中／あさま山荘事件。3月唐、金芝河とソウル無許可公演。5/15沖縄返還・唐『少女と右翼』9/5ミュンヘン五輪テロ9/6警察庁、特殊部隊編成を発表／12月唐『日本列島南下運動の黙示録』
1973変動相場制。五島勉「ノストラダムスの大予言」左京「日本沈没」。状況バングラデシュ公演。翌年、レバノン、シリア公演。
1975米軍ベトナム撤退。 クメール・ルージュ、プノンペン占領、民主カンプチア建国。武智鉄二『邪馬台の詩』で昭和天皇が99代、現天皇が百代とする／武田崇元らオカルト・偽史運動
1977　9/28日本赤軍ハイジャック：政府、要求を受容、国内外より批判。10/13ドイツでハイジャック:特殊部隊人質救出。11月警察庁,対ハイジャック特殊部隊極秘創設。
1978 日中平和条約。 １１月越、ソ連と条約（中国と対立） 、カンボジア侵攻。
1979,１月米中国交正常化。越軍プノンペン攻略。 ２月中国、越攻撃。 ヴォーゲル「ジャパンアズナンバーワン」／管理教育激化
1983ラングーン・テロ（韓国閣僚爆殺） 1989天安門事件、昭和天皇崩御。
1990,３月大蔵省総量規制。 7月校門圧死事件 ９月、韓国、ソ連と国交樹立。
1991,１月米イラク空爆、湾岸戦争。 10月バブル経済崩壊　12月ソ連滅亡。
1994 　明の朱元璋の転生を称する麻原彰晃、訪中。「オウム国家」構想。
1995 地下鉄サリン事件、11月戦争計画（wp「オウム真理教の国家転覆計画」)
1990 年代、大逆事件刑死者の名誉回復の動き活発。
1999ブレア、スコットランドとウエールズに自治議会承認。