原爆と原発

上記リンク先資料のとおり、原発において、原爆のような核爆発は絶対に起こりません。

ただ、それだけだと納得できない方のために、資料をパラフレーズし、最低限の要点だけを記します。なお、詳細については、必ずリンク先をすべてお読みください。

1.原爆と原発との違い
まず、原爆と原発とは、構造的にまったく違う機構を持っています。

核爆弾は、その燃料が90%以上の高濃縮ウラン235や金属プルトニウムであり、それらの核燃料が金属容器内にいれられている。そして爆弾点火時に瞬間的に摂氏100万度の高温高圧の気体状態をつくりだして、衝撃波と閃光を放つ。

原発では、燃料で使われるウラン235の濃縮率は3〜5%にすぎず、また燃料棒の被覆管の厚さはおよそ0.6mm。このような機構では、連鎖反応が進んだとしても、核燃料が気化する前に燃料棒は溶解する(メルトダウン=炉心溶融)のであって、核爆発にはならない。

2.チェルノブイリ、スリーマイル、福島の各事故の違い

スリーマイル事故では炉心溶融が起きて、燃料棒と格納容器が破損したが、冷却により事態は終息した。

チェルノブイリ事故の場合はメルトダウンは起きていない。爆発したが、これは核反応と併発した水素爆発による。この核反応とは、核分裂連鎖反応のコントロールに失敗して発生した「核暴走」である。

 それに対して、今回の福島事故は、スリーマイル事故と同様の「冷却剤喪失事故」である。

 チェルノブイリ事故の場合は、制御棒のほとんどが抜かれており、炉のなかの核分裂連鎖反応を止めることができなかった。
 
 今回の福島事故では、すでに制御棒が入り、核分裂連鎖反応は止まっている。
 しかし、核分裂で生じた放射性同位元素が燃料棒にあるので、その崩壊熱で温度が上昇するから、冷却する必要がある。

またチェルノブイリ原発の炉は、「黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉」であり、スリーマイルは「加圧水型原子炉」、福島は「沸騰水型原子炉」であり、それぞれ機構が異なる(詳細はそれぞれウィキペディアの該当項目)。なお、、Josef Oehmen博士によれば、「もし炉心が溶融し圧力容器が爆発(最終的には融ける)したとしても、コアキャッチャが溶け出した燃料や他のすべてのものを捕え、核燃料が散開することで冷却される」(リンク先の解説を参照 http://bit.ly/eQQ3e8)。

3.最悪のシナリオ
最悪のシナリオとして、格納容器破損による放射性物質の大気中への放出という事態がある。チェルノブイリをここであらためて参照する。チェルノブイリ事故において、炉が破壊されると、炉心内部の放射性物質が推定10t大気中に放出され、北半球全域に広がった。事故直後の健康被害は、放射性ヨウ素によるものだった。このヨウ素半減期が8日。被曝者は、そのヨウ素の混入した牛乳などの食物を摂取したことで、内部被爆した。
 かりに放射性物質が大気に放出された場合、屋内退避をし、呼吸によって大気中の放射性物質を摂取しないためにマスクや濡れたタオルでそれを防いだり、また放射性物質を含んだ雨や雪にかからないようにする。ただし、外部被曝は除染によって除去できる。
 チェルノブイリ事故の際、ソ連政府は30km以上離れた地域に避難させた。
 現在、日本政府は半径20km以上の地域に住民を避難させている。
 30kmまで拡大(3/15,am11:30)。

=========<参考資料>
東京大学理学系研究科の早野龍五教授による原発関連の情報まとめ
http://bit.ly/hcDmBP
・MIT技術者Josef Oehmen博士による解説。http://bit.ly/eQQ3e8
・高田純教授による資料
http://www.iryokagaku.co.jp/frame/03-honwosagasu/389/389-01.pdf
・高田純『核爆発災害』中公新書1895
京都大学原子炉研究所今中哲二教授「チェルノブイリ原発事故」
 http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/kek07-1.pdf
放射線医学研究所 http://www.nirs.go.jp/information/info.php?i3
肥田舜太郎・鎌仲ひとみ『内部被曝の脅威 』ちくま新書
ウィキペディア