今日は御徒町。ピエールさんを、どう挿入すればいいかで、ずっと滞ってしまった。結局、1時間くらいしかできなっかったが、それでも、とりあえず、問題はクリアでき、一歩、前進できた。「とりあえず」というのをよくぼくたちは使うが、「now」でもないしで、「tentative」でも伝わりにくく、おたがいその語で、よく笑っている。
 夜は、笛田さんのパートの稽古となっていて、ちゃんと見たのは、今日がはじめてだった。なんというか、超絶だめだしとでもいおうか、すごい。一行、一文、あるいは一語の発声についての、入念の稽古。
ぼくには正直、お手上げだが、たしかにここまでやらないとなあと感嘆、敬服する。笛田さんは純粋俳優/演劇人ではないか。その意味では、ぼくは不純である。でもまあ、今日の編成は結局、純粋舞踊に向かうということではあったか。
 振付/演出をしていると、自分が踊れなくなる。それはたんに、4時間の稽古のあいだ、自分の踊りを稽古する場所ではないからだ。これはなかなかきついことだし、ぼくのケースの場合はとくにそうだ。別に自分がとりわけそうだといいたいわけではなくて、資質的に、ということだ。
 花さんは、むかし笠井叡先生の「講習会」に通っていたらしい。第一生命ホールでの舞台で、スカートはいた叡さん、それをめくって、客が、きゃーっと喜ぶという感じだったらしい。花さんの隣にいた中年男性は、「アキラー!!」と叫んでいたいたらしい。そういえば土方さんのインタビューで、土方さんの踊りを身ながら、自慰する青年の話しがあった。週刊誌でかくしてはいたらしいが。同性愛について、あのころはステータスというか、ファッションというか、ある独特の、いまはない憧憬のようなものがあったらしいことは方々で聞く。むろんそれはたんに「憧憬」ではなく、実践もこみのものであったようだが。だから、あれだな、野郎歌舞伎、初期歌舞伎の流れだ。野郎歌舞伎についても前々から興味があったがいまだ読んでない。いまはああいうコードはなくなった、とはいうものの、実際どうなのだろうか。ホモソーシャリティの次元とは異なる、同性愛的な次元というのは、すくなくともぼくには、コードとしてはある。ぼくは女性ダンサーよりも断然男性ダンサーの方が好きだ。それはなんに由来するか。むろん幼年期の体験は影響しているだろう。「おじょうちゃん」とよく呼ばれていた。あのころ小学校では、坊主頭が多かったわけだが、そのなかでぼくは長髪だった。それに格好も、周りの地域で買えない、東京時代のものだった。よくは覚えていないが、とにかく派手ではあった。水色のポンチョ、赤…。3才まで東京の吉祥寺に住んでいた。そのころの写真を、小学校のときにいくどか見ていた。そうだ。ぼくの場合、幼年期は、実際の記憶によるのではなく、写真によるものがおおい。3才で、東京を離れたわけだから、ほんとうに覚えてはいない。あの坂道をのぞいては。そのことについて、以前書いたものがあったっけ。吉祥寺の善福寺公園がぼくにとっての原風景であり、すこしおおげさにいえばぼくの聖地である。
 そうか、つらつら書いていったら、ここまで来たか。たしかに、ここまで書くことはなかった。このはてな日記がいいのは、とりあえずだらだら書いてもいいことだ。他者も見るのだろうが、もういいのだ、とりあえずこれは自分の葛藤がどこに由来し、その起源を探究することは、今後の方向性の発見につながるだろう。いやそれが目的なのではない。そうではなくて、いままでなぜ自分が選べず、なにか焦躁して、次から次へと挫折していったことの分析だ。むろん家の事情ということもあった。あまりにつらく、誰にも相談できず、彼女に相談しても、自分の問題というか、こと家族の問題だったから、解決するわけがない。
 社会と時代を乗り切るということだったのか。社会と時代によって父は惨死した。そのことについてものすごく強い憤りを感じると同時に、どうすることもできない自分のふがいなさにうんざりしていた。
 しかもこうしたことの苦しみは、どうやら日本社会ではタブーであった。いまはどうかしれない。だが、数年前、あるいは周りではそうだった。家の経済事情、そこからくる圧力。それで自殺した先輩もいた。
 親の借金を背負うということはたしかにつらい。しかもそれが自己破産によってでも解決できないうちのような場合はさすがに書けないこともあるが、ぼくがいいたいのは、日本社会における共同性の問題なのだ。ぼくは前に友人がいないと書いた。むろんそれは事実には反する。というか、それは友人の定義の問題、あるいは友愛の政治学の問題だ。おおくの人間が「友人がいない」とぼやいていることは知っている。
 それがなんであるのか。たとえばヨーロッパにはパーティの習慣がある。別に日本でパーテイをすればいということではないし、飲み会がそれにあたるわけだ。
 ちょっといろいろ脱線しすぎか。いつものことだが。