バンヴェニスト
昨晩は、パゾリーニ関連の本の海、というか沼のなかにのめりこんで、出て来れなかった。いまでも、昨晩、なにを読んだか、茫漠としている。パゾリーニの詩編や小説の数少ない翻訳に目を通していたのだろうが、ああ、岡崎乾二郎さんの「ルネサンス 経験の条件」とか、ダンテ・アリギエーリDANTE ALIGHIERIのLA DIVINA COMMEDIA(HOEPLI)を、いくつかの翻訳と照合させながら、verval drugに痺れていってしまったのだった。
おそるべし、言語麻薬。ほんとうは、この麻薬のなかで死にたいのだって、数年前はそれでほんとうに死にかかったのだった。危険。でも、えんえん、比較言語学の人生も、やっぱり憧れる。幸田露伴、アントワーヌ・メイエ、風間喜代三さん…
となると、前田耕作先生。
エミール・バンヴェニスト「インド=ヨーロッパ諸制度語彙集」言叢社。前田耕作監修、蔵持不三也、田口良司、渋谷利雄、鶴岡真弓、檜枝陽一郎、中村忠男、共訳。
そうだ、せめてこのブログで、ノートをつけていくことで、前田先生へ恩返しをしよう。そのことで、学恩を少しは反対贈与できるかもしれないし、勉強もできる。
EMILE BENVENIST,LE VOCABULAIRE DES INSTITUTIONS INDO-EUROPEENNES,EDS.DE MINUIT,1969.
エミール・バンヴェニスト「インド=ヨーロッパ諸制度語彙集I:経済・親族・社会」
1。経済
I.家畜と富
1.牡と種畜
2.語彙対立の再検討 susとporcus
3.Probatonとホメロース時代の経済
4.家畜と貨幣pecuとpecunia
II.与えることと取ること
5.贈与と交換
6.与えること、取ること、受けること
7.客人歓待制度
8.個人的忠誠
III.購買
9.購買の二つの方法
10.購入と買い戻し
11.無名の職業、商業
IV.経済的義務
12.勘定と評価
13.賃借
14.価格と賃金
15.信用と信仰
16.貸与、借金および負債
17.無償性と感謝
2。親族語彙
1.親族概念の重要性
2.母の地位と母系出自
3.外婚の原理とその適用
4.<婚姻>のインド=ヨーロッパ語的表現
5.婚姻から生ずる親族
6.親族用語の形成と接尾辞派生
7.親族用語の派生語
3。社会規約
1.職能の3区分
2.4つの社会的な帰属圏
3.自由人
4.フィロス
5.奴隷、他所者
6.都市と共同体
(以上、I巻)
「インド=ヨーロッパ諸制度語彙集II:王権・法・宗教」
1。王位と特権
1.rex
2.xsayとイランの王権
3.ギリシア的王権
4.王の権威
5.名誉と褒賞
6.呪力
7.Kratos
8.王位と貴族
9.王とその人民
2。法
1.themis
2.dike
3.iusおよびローマにおける誓約
4.med-と尺度の概念
5.fas
6.censorとauctoritas
7.quaestorとprex
8.ギリシアにおける誓約
3。宗教
1.聖なるもの
2.灌奠
3.供儀
4.誓願
5.祈りと懇願
6.神意と前徴に関するラテン語語彙
7.宗教と俗信
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千章堂書店にて、タデウシュ・カントールの画集。なんという幸運。しかも、御主人、ゴッホ展のチラシを物欲しげにぼくが眺めていたら、招待券をくれた!なんということ。
プレゼントー贈与。ありがたや、ありがたや。
この気前のよさの反対に、すさまじくケチな主人もいる。経堂の某書店。もう10年くらいまえになるが、自転車でその店に立ち寄った。一冊の本を買った。400円。で、袋に包まない。むろん、そのとき、自分が袋をもっていたら、別にいい。だが、そのときは自転車で、片手運転はつらい、というか、ふつうはビニール袋くらいなんということもないはずだ。「あ、袋もらえますか?」主人、笑いながら「勘弁してください!」。一瞬、意味が分からなかった。そんな対応ははじめてだったし、以降も、ない。結局、理由をいうと、しぶしぶくれたのだが。どうせ、仕入れね0円の本を、400円で売ったわけだから、売れるまでの時間的経費という計算もわかるが(といって、たぶん、そういうことではなく、たんに、売上が悪いから、経費削減のつもりだったのだろう)、1円もしないビニール袋を、ケチルのか。なにが間違っているか。産業者として立っていないということか。まあどうでもいい、けちな話。その店には二度と行っていない。ごくごくふつうの売買ー交換行為にも、こんにちでは「サービス」といわれる「モラル」が求めらる。商売者ー産業者(?)としてのモラル。ぷっ。
「¥0スマイル」も「呼び声」も、「モラル」。それを怠ると、って、しかし、それにしても、みみっちい話だなー。自分も忘れりゃいいのに、ふっと思い出してしまった。
…そうか、マックス・ウェーバーらの「経済倫理」はエティックであった。対し、E・P・トムソンらの「モラルエコニミー」論は、「経済道徳」であるのか。
エチックは、イデアというがよく、原理的な理念として、ひとびとを動かす。モラルは、…いうなればエチックの世俗化されたかたち。それに追随することが、半強制的・社会習慣的に、求められる。
贈与の経済ねー。名誉のモラルに関わるポトラッチとか。
経済のレベルにも、上部構造と下部構造のようなものがある。
…しかし、「ケチ」とは、たいがい、蔑称である。それが肯定的に言われるのは、たいがい、謙遜みたいな、偽悪的な(?)、自己侮蔑(?)の場合である。つまり、他者を名指してそういわれる場合で、肯定的な場合はないはずだ。
美徳としての「オゴリ」とか、「ふるまう」こと。「振る舞い」…なんだ、踊りじゃん、というか、パフォーマンスか。美徳のパフォーマンス。
「芸術」の母体としての「一般社会」における、パフォーマンスないし踊り…儀礼的なもの…お辞儀…挨拶…どうもどうも…笑顔…握手…
たとえばそこで交換されているのは、親愛の感情であったりする。
おんなじだな。
交換的行為(そうでない行為とはなんだろうか…)におけるメディウム=媒体としての、感情。あるいは、感情の交換。
…感情について…
環境世界を感覚感受したさいに、発生する意味のようなもの。しかし、それは言語的な意味での意味ではないような…感情とは、身振り言語あるいはパラ言語として、考えることができる。
「反応」とか作用ー反作用の、視点もある。
感情分析。
感情はたいがい、意識はされている。だがそれはしばしば言語化されない、されにくい。それは、対象化されるまでは、それこそ「無意識」的に、走るものだ。
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