image、表象と現実

  関東大震災を生き延びたひとが、東京大空襲のあとの焼け野原を見て、なぜこんな同じひどい光景を人生で繰り返し見なくてはならないのかと、だれかがいった言葉を、以前、なにかの本で読んだことがあった。それはこういうことだったのかと、リアルに了解できた気がする。といって、それは写真=imageによるものだ。実際の風景は、白と黒とではなく、赤や茶色や、いろんな色の破片が織りまぜられたものだったろう。
 それに、その出来事が起きたときの、大気や空気も、熱く、煙りに満ち、…しかしこうしたことは想像の範囲を出ない。

 私が知る限りでは、東京大空襲以来、東京は、こうしたカタストロフを体験していない。すくなくとも、焼け野原は。
 そうして、高度経済成長のなか、地震対策はかなり採用されながら、今日の大都市は形成されてきたのだろう。しかしそれがまたハリボテでないという保障もない。

 考えてみれば、地震対策グッズなどといって、一時はよく売れたようだったが、そうした対策もないよりもましという程度のものだ。ペットボトルの水をどれだけ買いこんでも、大火事や熱風を前にはまったく無力である。