トランク

帰国しました。イタリアツアーについてはいずれ言語化するでしょう。
冒頭より事故に見舞われ、ツアー中もさまざまなレベルで問題=トラブルが発生し、あげくのはては、二つのトランクのうちひとつが帰ってこないという、私(というか大多数の旅行者)にとっては、ひどく由々しき事態までもが発生したのですが、今朝、当該トランクはローマにあるということで、いま日本に向かっているとのこと。やれやれ、よかった。それにしても、この予想もしなかったトランクの不着という体験は、いざ体験してみると、実におそろしい。おみやげや買ったもの、貴重品なども当然そのトランクのなかには含まれている。そして、奇しくも今回の「あることの夢」のなかで延々、呪詛のように踊った形象も、トランクだったわけだが、不在のトランクを踊ったがゆえに、現実のトランクも、一時的にではあれ、失われたというこの符号が、ツアー中に体験されたイタリアという場所と私の踊りとのこれまたさまざまな符号とも絡み合っていて、空恐ろしくさえある。
 帰国してから丸一日、トランクが帰ってこない可能性が高いと予想される状況のなかで、いかにして損失を補填できるか、あれこれ考えたり、保険の条件などを調べていたりしたが、損失金額(つまり私のとっての荷物の価値)と補償金額はまったく釣り合いがとれない。
 そうした損失を埋め合わせることができるのは、唯一、イタリアを経験したということと、その記憶だけなのだと思った。