表現の自由を巡る法律系:早大ビラ撒き逮捕事件に寄せて

当局の法的根拠は、さしあたっては以下の法だろう。
http://www.ron.gr.jp/law/

■刑法第十二章 住居を侵す罪(住居侵入等)
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

憲法第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

この刑法130条における「正当な理由」、「人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物…への侵入」、「要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者」という規定が、争点である。財産権の侵害については、「建造物」の性格規定によるもので、この事件に関しては、同列の問題である(以下、2を参照)。


1.「正当な理由」については、憲法19条及び21条より

第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

ビラ撒きによる政治的主張=表現は、言論の自由に属するものである。したがってこれは言論の自由に基づいた正当な表現である。
これは、憲法12条

憲法第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

での「権利の濫用」にはあたらない。

2.「建造物への侵入」については、すでにweb上でも様々なところで論議されているように、私立大学という空間の社会的性格の規定しだいである。すなわち大学は私有地であるか、公共空間であるかといった問題である。これは大学の理念に関わる問題である。

3.「要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者」という規定については、当局の決定を擁護するものがくらいつく規定であるが、これは、1での表現行為の「正当性」の解釈次第である。これについては、すでに上記したごとく、「正当性」が認められると思われるので、争点とはならない。