ロマンス的時間

土曜の夜に夕食後、街に出ると、すごい人出である。そういえば、こちらはやはりシエスタ=昼休みの週間が、頑固に保守されており、昼食後から5時くらいまでほとんどの店も閉まるし、街はガランとする。もっとも、大学周辺などは異なるけれど、繁華街はまるで夜中のような状態になる。だから、日中、静かに街を歩いていて、夕方になるにつれ、人が湧いてくる感じがやはりとても異様である。ロマンス語文化とはこれまで書物を通じて付き合ってきたが、その言語が生きている社会と場所に行くのは今回のイタリアが初めてなわけで、むろんスペインなどにも行っていないので、シエスタが、ここまで今日、生活習慣=時間のサイクルとして守られていることに驚く。そしてこの話題は、サルデーニャでマッシモからひとびとの一日の過ごし方を聞くまで、持ち越される。朝は案外早くから仕事を始めている。ボローニャやローマでも工事は朝の7時くらいには始められていた。そして、昼食。やはり家で食べるようだが、それからずっと夕方まで休み、お店の場合は、夕方から8時まで営業。それから家に帰って夕食を取って、夜の10時や11時になると、なじみのバーなどでみなと待ち合わせ、飲んだり喋ったりする。しかし、バスなどは24時間だし、また歩いて帰れる距離だったり、あるいは車でも平気で飲酒運転している。というか警官もあまり夜間は取り締まっていなさそうだ。あと、違うなと思ったのが、「飲む」といっても、喋ることがメインで、酔っぱらうことがメインではないようだ。まあこんなのはただの印象ではあるが、しかし、犬の糞こそ見れど、嘔吐物を路上で見かけることはなかった。
 しかしこうした頑固な伝来の時間習慣を守ることは、ヨーロッパ共同体としてはたしかに大変だったろうなと思う。ドイツ人がイタリア人に対して腹を立ててたらしいが、たしかにこれは「ずるい」wかもしれない。こんなに人生を、あるいは毎日を楽しく生きていいのか、と思わざるをえない。20日くらい滞在して、こうした時間感覚はどこの都市でもそう変わらなかった。ということはやはりこのサイクルで社会は廻っているのだろう。朝から夜まで一時間くらいの食事休憩をいれながら働く社会と比較するならば、こうしたシエスタを持つ社会は、労働時間を二部構成にしていることになる。朝、労働。昼、休息。夕方、労働。夜、遊び+休息。
 たしかに日差しはかなり強く、シエスタはむしろ歴史の知恵のようなものだろうけれど。