ユートピアについて
ひるがえって世界史を考えると、様々なユートピア運動が実践されてきた。そのうちもっとも大規模な実践となった運動は、カール・マルクスを震源とした共産主義ないしマルクス主義によって導かれた運動の実践だった。
どれだけのひとがマルクスの構想に共鳴し、実践に移し、その構想に相反する当時の既存勢力と戦い、血を流しただろう。
しかしそれは恐ろしく不幸なことに、予想できなかった悲劇をもたらした。
スターリン、毛沢東、ポル・ポト、あるいは日本の新左翼運動における内ゲバ、…それぞれは異なる社会でのことであるが、これらはすべてマルクスのユートピアを理念としていた(各人がどれだけマルクスを読んだかはあまり関係がなく、文脈としてマルクスの思想があったということである)。
私見ではとりわけ、スターリンが、共産主義運動の夢を、最も残忍な形で潰したと思う。なぜそれが最大であったかといえば、ソビエトの実験が、最大の実験であったからだ。
もちろん、ソビエトの実験を、まったくの無価値であったとか、それがどれだけ単なる絶対主義による恐怖政治に見えるからといって、しばしばいわれるような、ナチズムと同一視することはできない。