フィリョース:料理の考古学(葡蘭と日本)

ポルトガル料理の本を買い、簡単そうなフィリョース・デ・ラランジャを作った。

小麦粉にオレンジ(ジュース)、オリーブオイル、ぬるま湯、ブランデー(なかったのでラム酒)を混ぜてこねて油で揚げる。

油で揚げ始めてわかったのだが、これ、煎餅ないしあられである。

揚がったら、粉砂糖とシナモンを振りかける。

はじめて作った試作ということもあるだろうが、大しておいしくはない。
素朴な味である。

それよりも、天ぷらがポルトガル由来で、temperarまたはtemporasとかが語源とかいわれるのを考えると、
というか、私は長崎県出身なので、イエズス会士がカステラとかカスドースとかを伝えたことなどが感覚的に近い話題なので余計そう思うのだが、
煎餅もまたフィリョースのヴァージョンとしか思えない。

まあ、こういう粉ものを油で揚げるのは中国でもあるし、ユーラシア料理でもあるし、正倉院文書でも油で練ったいりもちの記述などがあるらしいから、
そう簡単にもいえないだろうし、料理史または料理の考古学を探求していかないとわかりはしないだろうけど。

とはいえ、フィリョースはいまでいうがんもどきを元はひろうすと呼んでいたことからも(一説では1697年の料理書に掲載)、やはりフィリョース的な調理法をなるほどと思った当時の日本人の間でひろまっていって、油揚げなり厚揚げ豆腐なり、そして煎餅などへとヴァージョンが作られていったのは十分ありえる。

というか、煎餅なり天ぷらなり江戸時代以降の記録がほとんどのようで、それ以前の記録が出てこないことには、この伝来説を覆すことはできなかろう。

長崎にいると、いまだにポルトガルとオランダの影はある。知人にもオランダに留学したりオランダ人と結婚したりというのも複数いる。