赤と白の倫理
楳図邸がテレビのネタになっているが、厳格主義者のつもりらしい近隣住民が「暴力」だと抗議し裁判に持ち込んだということ。
まあ冗談なのだろうと思うのだが、どうも本気ではあるらしい。
赤と白の縞模様の外壁塗装が「色彩の暴力」だと。
屁理屈もはなはだしいし、そんな程度のことを暴力とするのは、よっぽどののんきで幸せである。この世をすべて統御できるとでも思っているのか。
私も三歳まで住み、またその後も住んでいたことのある吉祥寺にはいろんな外装の店舗がある。
店舗はよくて個人の邸宅だとだめなのか。
物語作家としてはカフカよりもすごく、絵師としてもジョットやセザンヌや富岡鉄斎クラスの楳図かずおを、変態漫画家くらいに思っているのだろう。これだから、無教養は困る、という話しになってしまう。
楳図かずおはまだ人間国宝にはなっていないようだが、もしそうやって権威づけされていたら、絶対にこんなことにはならなそうだ。
芸術家が特権階級だとか権威主義だとかそんな原理的な話しに抵触するようなことではない(抵触しても構わないが。→芸術の社会的機能という観点からすれば、楳図氏は十分すぎるほど日本国および世界に貢献した…)。これはたんなる、嫌がらせであり、いわば一種のいじめである。
ウィキペディアの記述によれば、楳図かずおに対して、小学館の馬鹿な新任編集者が、拳骨を書いた絵をもってきて、「手はこう書くんです」といったという。
真偽は分からないとはいえどうも本当のことっぽい、これはなんともいやらしいやり方である。自分の理解できないものを「この変態野郎め」と判断するこの仕方。
大手出版社の権威を傘に権力を行使する。「住民」はといえば、「善良な住民」を代表して、同一化の権力を行使する。
例えば外壁に巨大な性器を書くようなことであれば、たしかに裁判に持っていってもいいだろう。赤と白の縞模様のどこが暴力か。言いがかりもはなはだしいとはこのことだ。
また、金の亡者(影亡者ではなく)であるテレビが延々ネタとして反復させる。
この手の連中はあそこの家はユダヤ人だとか、アカだとかいって密告するタイプの卑劣な人間である。
「近隣住民の迷惑」になるようなことを「正義」を行使するうえでの根拠つまり絶対的な悪として見なすこの仕方…
でもまあ、冗談なのだろうとは思うのだが…